(MO)アルトリアは買いか?検討してみます。
長文なので、前編、後編にわけました。
前編は、喫煙者数減少に係るEPSへの影響(→-1%?~+3%?)
後編は、電子タバコ、マリファナ買収に係る影響(→天地がひっくりかえるほどではない?)
バリエーションは、おおよそ以下のとおりです。
米国上場
予想PER 12倍
予想配当利回り 6.5%
ブログ主が保有していることもありますが、
やや強気(長期にゆっくり買い増し)で考えています。
■検討事項
2018年に(MO)アルトリアの株価が70ドルから50ドルに30%弱下落しました。
弱気な理由はおおよそ4点報道されています。
・米国で喫煙者の減少
・FDAによるメンソールタバコ販売禁止の方針
・マリファナ事業「クロノス」を18億ドルで買収
・電子タバコ「JUUL」を128億ドルで買収
内容を確認しながら、(MO)アルトリアは買いか?検討していきます。
■喫煙者減少、メンソールタバコ販売禁止
今後のアルトリアの業績を予想します。
アルトリアの事業部門は4つに分かれています。
事業部門 | 小分類 | 売上割合 |
Smokeable Products | Cigarettes タバコ | 89% |
Cigars 葉巻 | ||
Smokeless Products | Copenhagen and Skoal 噛むタバコ | 8% |
Wine | ワイン | 3% |
売上のほとんどを「タバコ」&「葉巻」が占めていますので、
この部門のデータを使って予想していきます。
<米国全体で喫煙者数は減っている?>
まず、米国のトレンドをおさえるため、喫煙者数を推定してみます。
米国公的機関CDCのサイトから喫煙率を拾います。
米国の人口はどこにでもありますので、適当に拾ってきます。
推定喫煙者数=喫煙率×米国人口
で当ブログ独自に推定します。推定結果は以下のとおりです。
年 | 喫煙率(%) | 米国人口(万人) | 推定喫煙者数(万人) | 推定喫煙者数 前年比増減率 |
2011 | 21.2% | 31200 | 6614 | |
2012 | 19.6% | 31428 | 6159 | -6.9% |
2013 | 19.0% | 31650 | 6013 | -2.4% |
2014 | 18.1% | 31885 | 5771 | -4.0% |
2015 | 17.5% | 32122 | 5621 | -2.6% |
2016 | 17.0% | 32357 | 5500 | -2.1% |
2017 | 17.1% | 32589 | 5572 | 1.3% |
2011年から2017年までで、人口が増えるペースより喫煙者が減るペースのほうが早く、
推定喫煙者数が-15.7%減少しています。
1年あたり平均、-2.5%くらいのペースで減っています。
<アルトリアの売上、利益推移は?>
四半期のデータがアルトリアのサイトで公開されています。
イメージのデータを四半期ごとに並べたものが以下の表です。
全社 | タバコ事業 | ||||||
売上 | 株数 | タバコ売上 | 出荷数 | 推定単価 | シェア | ||
2011 | 1Q | 5643 | 2084 | 5143 | 32234 | 0.160 | 49.0% |
2Q | 5920 | 2076 | 5858 | 36521 | 0.160 | 49.3% | |
3Q | 6108 | 2054 | 5499 | 33639 | 0.163 | 48.7% | |
4Q | 6129 | 2043 | 5470 | 33990 | 0.161 | 48.8% | |
2012 | 1Q | 5647 | 2034 | 5100 | 31436 | 0.162 | 49.4% |
2Q | 6487 | 2027 | 5903 | 36555 | 0.161 | 50.1% | |
3Q | 6242 | 2024 | 5613 | 34004 | 0.165 | 49.9% | |
4Q | 6242 | 2013 | 5600 | 34116 | 0.164 | 49.8% | |
2013 | 1Q | 5528 | 2003 | 4968 | 29774 | 0.167 | 50.5% |
2Q | 6305 | 2002 | 5678 | 34117 | 0.166 | 50.7% | |
3Q | 6553 | 1998 | 5802 | 34437 | 0.168 | 50.7% | |
4Q | 6080 | 1992 | 5420 | 32182 | 0.168 | 50.7% | |
2014 | 1Q | 5517 | 1986 | 4958 | 29023 | 0.171 | 50.7% |
2Q | 6256 | 1980 | 5611 | 32465 | 0.173 | 51.0% | |
3Q | 6491 | 1976 | 5859 | 33512 | 0.175 | 50.9% | |
4Q | 6258 | 1970 | 5511 | 31661 | 0.174 | 50.9% | |
2015 | 1Q | 5804 | 1966 | 5221 | 29500 | 0.177 | 51.1% |
2Q | 6613 | 1962 | 5974 | 33458 | 0.179 | 51.4% | |
3Q | 6699 | 1958 | 6040 | 33533 | 0.180 | 51.3% | |
4Q | 6318 | 1958 | 5557 | 30852 | 0.180 | 51.4% | |
2016 | 1Q | 6066 | 1956 | 5422 | 29866 | 0.182 | 51.4% |
2Q | 6521 | 1954 | 5829 | 31829 | 0.183 | 51.4% | |
3Q | 6905 | 1952 | 6147 | 33225 | 0.185 | 51.4% | |
4Q | 6252 | 1946 | 5453 | 29413 | 0.185 | 51.4% | |
2017 | 1Q | 6083 | 1939 | 5458 | 29094 | 0.188 | 51.0% |
2Q | 6663 | 1928 | 5922 | 30975 | 0.191 | 50.8% | |
3Q | 6729 | 1915 | 5975 | 31213 | 0.191 | 50.5% | |
4Q | 6101 | 1905 | 5281 | 26866 | 0.197 | 50.3% | |
2018 | 1Q | 6108 | 1899 | 5414 | 27900 | 0.194 | 50.3% |
2Q | 6305 | 1891 | 5546 | 27683 | 0.200 | 50.2% | |
3Q | 6837 | 1883 | 6035 | 30109 | 0.200 | 50.1% | |
4Q | 開示前 | ||||||
売上 | 株数 | タバコ売上 | 出荷数 | 推定単価 | シェア | ||
平均増減率 (2011-2017) | -1.50% | -2.50% | +3.50% | ||||
平均増減率 (2016-2017) | -2.11% | -8.66% | +6.03% |
推定単価は、「タバコ売上÷出荷数」で当ブログ独自に算出したものです。
2011年初を100とした四半期ごとの変化率をグラフにしました。
ここから読み取れる情報としては、
・タバコ売上、出荷数は季節性がありそう。(4~9月が多く、10月~3月が少ない。)
・推定単価はほぼ一貫してあがっている。
・シェアは2016年まであがり続けていたが、2017年から減りはじめている。
さらに、推定喫煙者数と組み合わせたグラフ(こちらも変化率)はこちらです。
注)2018年の決算は執筆時点で3Qまでです。過去、4Qは年間売上の24%を占めてましたので、
3Qまでの数字に約1.33倍して補足しています。
・アルトリアの出荷数(オレンジの線)は、米国全体の推定喫煙者数(緑の線)の上を行っており、
米国平均より減少が緩やか。(アルトリアが優秀。)
・ただ、2017年以降は米国平均より出荷数の減少幅が大きい。(電子タバコに押されている?)
・タバコ売上(青の線)はほぼ横ばいで、出荷減少を単価増で補えている。
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お疲れの方へどうぞ。
<中間まとめ>
アルトリアを過去のデータから評価する際、どの期間をみるかで、
みえる景色が変わってきます。
2011年以降のデータでみると、「アルトリアは優秀で楽観的に考えてもよい。」と思えます。
2017年以降のデータでみると、「出荷減少のペースがきつく悲観的にならざるをえない。」
と思えます。
ということで、楽観的なシナリオと悲観的なシナリオを考慮することにします。
(コストや、abインベブ等を考えるとややこしいので、利益率は一定と仮定します。)
シナリオ | ブログ主の売上予想 | ブログ主のEPS予想 | ブログ主の増配予想 |
楽観的 | 価格×販売数 (1+0.0350)×(1-0.0250)=1.0091 | 利益(=売上×利益率)÷株数 1.0091÷(1-0.0150)=102.44% | 2.44%ずつ増配 |
悲観的 | 価格×販売数 (1+0.0603)×(1-0.0866)=0.9684 | 利益(=売上×利益率)÷株数 0.9684÷(1-0.0211)=98.93% | ほぼ横ばい (1.07%ずつ減配) |
悲観的なほうで、減収減益はあるものの、1株利益も1%ずつ減り
連続増配は期待できないかもしれませんが、
高配当をもらえるなら、今後2~3年は比較的リスクは少ないのではないでしょうか?
FDAによるメンソールタバコ販売禁止によって、このシナリオより喫煙者が減ってしまうと
売上、利益面ともにかなり厳しいですね。
若年層に人気があるようなので、すぐに喫煙者数が激減するシナリオではないかもしれません。
アルトリアは、2018/12/20のJUUL買収に関するIRの中で、以下の内容を発表しています。
「アルトリアは、長期的なEPS成長目標を7%~9%としており、配当性向80%を維持していきたい。」
Long-term Financial Goals Altria maintains its long-term financial goals to grow adjusted diluted EPS at an average annual rate of 7% to 9% and to maintain a dividend payout ratio target of approximately 80% of adjusted diluted EPS.
中間まとめの最後に、2019/1/8にyahoo financeで流れていたアナリストの意見です。
Cowen and Company downgraded Altria Group (MO) from “outperform” to “market perform” due to the accelerating decline in Altia’s cigarette sales. Also, Cowen lowered its 12-month price target from $74 to $53. As CNBC reported, Cowen expects Altria’s cigarette volumes to decline at an annual rate of 7.3% over the next five years, compared to a decline of 3.1% over its previous five years.「Cowenは、アルトリアを"アウトパフォーム"から、"市場平均"にダウングレードし、
12か月の目標株価を74ドルから53ドルに引き下げた。
理由は、タバコの販売量が過去5年で3.1%減少したのと比べて、
未来5年は、7.3%の減少を見込んだためである。」
Cowenさんは、違う指標をつかって分析しているかもしれないです。ブログ主よりやや楽観的です。
注)そもそも投資分析に関して、ブログ主が悲観的な傾向が強いところがあります。
ここまでかなり長文になってしまいました。
マリファナ、電子タバコ買収の影響の考察は、後編で書いていきます。
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